MG誌系のケレン味つゆだくのコピーライティングに慣れていると、MA誌系のソレはなんか枯れた感じに見えてしまう。
MA系作例をお手本に工作しようとすると、いとも簡単そうに淡々と記述されている事が、時折えらく高難易度で悶絶させられる。
この感覚、他にどこかで…と、思い出してみたらアレだ、「ボブの絵画教室」!
「ね、簡単でしょう?」
5インチの筆があると、なんでも描ける気がするんだよなあ。
さて、今回は、魚雷運搬軌条と缶室ケーシング上の各構造物の工作。
本来なら、主要部品のバランスを取ってから細部工作に入りたいのだが、魚雷運搬軌条は構造上、一部が艦橋側壁の内側に潜ってしまう。
よって、艦橋を組み上げる前に作っておかねばならないのだ。
魚雷運搬軌条まわり
毎度お馴染み、「艦船模型スペシャル No.17」 (以下、「艦スペ」) の睦月型の作例[1] で、「魚雷運搬軌条はプラ材で作り付けている」と、サラッと書いてあり、まあ最近はプラストラクトの極細プラ棒もあるし楽勝だよね、と思っていたら甘かった。
軌条は、基本的に舷側と平行に真っ直ぐ走っているのだが、魚雷発射管付近では魚雷装填のため、発射管に向けて内側へ緩く弧を描いている。
これを等間隔に接着し、かつ3隻の仕上がりを揃えるのにえらく難儀した。
3隻ぴったり同じカーブとは言い難いが、まあ、ギリギリ見られるものに仕上がった気がする…と思う。
軌条の基準位置を決めるため、併せて予備魚雷格納函も取り付けた。
最初はこれまたいつもの「日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編」[2] に従って、長さ10mm×幅1mm×高さ2mmで製作してみたが、前回缶室ケーシングを作り直した影響か、やや背が高すぎるように感じる。
そのままだと、上の蓋の開閉クリアランスがなく、砲座と蓋がぶつかってしまうので、高さを1.5mmとしてみた。
これはこれでやや低いような気もするが、天面の蓋のモールドを入れると厚みでちょうど良くなるのではないかと踏んでいる。
軌条設置が終わったら、艦橋基部側壁の取り付け。
「栗」と「栂」は厚みを調整しただけでほぼそのまま、以前の記事で触れたように、「蔦型」以降は前後に短くなっているので、「蓮」はキットパーツを切り詰めて使用した。 いずれも、甲板平面の継ぎ目を消すため、上に伸びている支柱は一旦切り離した。
他2隻はともかくとして、「蓮」は上部支柱の形が違うので、どうやって処理するか悩む。とりあえず保留。
缶室ケーシング上部
キットの仮組状態で見ると、個々のパーツのバランスはあまりおかしくないものの、組み上げてみると、煙突がやや低く、砲座と主砲が共にやや高い。
そのせいで、実艦の写真の印象に比べると、前後煙突まわりのメリハリがなく、平坦な印象になってしまっている。
砲座の高さは前回の工作で修正されているので、煙突と主砲のバランスを修正。
煙突は突き出しピンの修正が面倒な上、「蓮」では頂部が延長されているので、プラ棒とプラ板で作り直し。
前後とも、元パーツより約0.5mm程高くした。
ジャッキステーの処理は悩んだが、どうもこのサイズの凸モールドに以前から違和感があったので、試験的にスジ彫りで処理してみた。
また、睦月型の図面[3] や写真[4] を見ると、煙路1缶分につき1枚ずつ、前後の仕切り板があるように見える。
八八艦隊系ならまあ似たもんだろう (暴論)、ということで、プラペーパーで仕切りを入れた。
黒くないと仕切りが矢鱈目立つんだが、大丈夫かコレ……。
写真は真横からの比較。 両煙突と2番砲の高さに差がついたことで、メリハリのある艦影になったと思う。しかし、羅針艦橋がついてないと、いまいち修正の効果が判り辛い…
主砲の12cmG型砲は、恐らく今作最大の贅沢品、アドラーズネスト製の12.7cm高角砲用真鍮挽き物砲身を使用。
当初、真鍮パイプやプラ棒で砲身を作ってみたが、やはり口径12cm以上だとテーパーが無いとそれらしく見えないので。
12.7cm砲用のパーツなのでややオーバースケールになるかと思ったが、写真と比べると逆にもう少し太くても良かったかも?
砲身以外は、ピットロードの日本海軍艦船装備セット [IV] (今年発売のやつじゃなくて、所謂、旧装備品セットの方) のG型砲を加工して使用。
ピットロードのG型砲は何故か砲尾部分に謎の垂れ下がりが有るので切除、盾部分はかなりオーバースケールなので、元の肉厚を活かして外側を削り込み、前期型と後期型の盾形状を作り分けた。
実は、G型砲の部品は、スケール的にはピットロードのそれより、キットの方が正しい。 しかも砲身や盾の成型がシャープかつ繊細でかなり良い。
が、今後、峯風型駆逐艦や千鳥型水雷艇を作る際、部品取りの為だけに「樅」か「若竹」のキットを買うとえらく高くついてしまう (かつ、使わない船体などをそのまま捨てるのに抵抗が…) ので、敢えてピットロードベースで統一した。
写真は、奥からキットパーツ、ピットロード版素組み、ピットロード+真鍮砲身の前期型盾装備、ピットロード+真鍮砲身の後期型盾装備の順。
ピットロード版素組みはモールドはともかく、各部品の大きさと位置関係がおかしいせいか、まったく別物の何かに見えるなあ。
前期型盾でも、「樅型」に装備されているものは天面が抜けているのだが、今回はそれに天幕を張った状態にしようと思うので、天井は抜いていない。
夕方、部屋でこの記事を執筆していたら、遠くで花火大会の音が聞こえ、障子越しに微かに花火の明滅がわかる。
咄嗟に「おお、対空砲火みたいだ」と思ってしまうのが、軍オタのダメなところ。 きわめて無粋である。
参考書籍
- 鶴岡 政之「フルハル・モデルをつくろう (2) 駆逐艦『睦月』 竣工時」『艦船模型スペシャル No.17 日本海軍 駆逐艦の系譜・1』モデルアート社、2005年、79頁 ^1
- 岩重 多四郎『日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編』大日本絵画、2012年、20頁 ^2
- 「公式図面:『三日月』船内側面」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ64 睦月型駆逐艦』学習研究社、2008年、91頁 ^3
- 田村 俊夫「引き揚げられた『菊月』」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ51 帝国海軍 真実の艦艇史』学習研究社、2005年、124頁 ^4
全て敬称略。