具体的には、
- 修正マンセル値の明度~3.5の色は、明度を+1
- 修正マンセル値の明度3.5~4.5の色は、明度を+0.5
- 修正マンセル値の明度8~の色は、明度を-0.5
- 修正マンセル値の彩度12~13.5の色は、彩度を-1
- 修正マンセル値の彩度14以上の色は、彩度を-2
- 色相はそのまま
というルールとした。当然、すべてをこのルールのもと厳密に調色しているわけではなく、色見本同士の干渉を見つつ適宜調整している。
それらを加味した結果、このような配色になった。以下、各色について説明してみる。
また、前回の駆逐艦「樅型」と比較するとこのような感じ。
「樅型」に比べると、やや温かみのある配色にした。
明度のルールについては、写真では変化が判り辛いはず。鼠色部分が、「樅型」が最も暗いと云われる佐世保工廠色で、「天龍型」が最も明るいとされる舞鶴工廠色 (後述) を想定しており、元が違う色だからである。
一方、色相と彩度については、特に甲板のリノリウム部分に顕著だが、前回は色相を青みに振り彩度も下げていたので暖色系が灰色っぽいのに対し、今回は色相と中~低彩度帯の彩度を維持しており鮮やかに感じられるだろう。
鼠色
「天龍型」の2隻は開戦時舞鶴鎮守府所属 [1] [2] なので、舞鶴工廠色基調の塗装と思われる。
衣島尚一氏の「軍艦の塗装」によれば修正マンセル値N5 [3] とのことで、付録のカラーチップの色調もほぼ一致。
上記ルールに則ると、模型的にも調整なしでそのままN5でOK。
手持ちのN系グレーの中には、ズバリのN5がなかったため、N4.5近似のクレオスの「Mr. カラー 城」の瓦色に白を加えて使用。
見本の調合比について
以下の色見本の右列は、調色に使用した塗料だが、概ね上から配合比が高い順となっている。 1番上をベースに、2番目、3番目と足して調整していく感じ。
ただ、当然、保存状況などにより塗料の濃度が変わってくるので、具体的な調合比は割愛した。人によっては、2番目以降は順番が入れ替わる事もあるかもしれない。
鼠色 (舞鶴) | N5 | GSIクレオス Mr. カラー 城 CK2 瓦色 + ガイアノーツ ガイアカラー Ex-02 Ex-ホワイト |
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リノリウム
「軍艦の塗装」のカラーチップ [4] の実測では5YR3/3近似で、ピットロード艦船カラーのリノリウム色もそれに近い。こちらは本文に修正マンセル値の記載は無い。
そこに上記の空気遠近法を加味した結果、5YR4/3あたりとなる。
ピットロード艦船カラーのリノリウムに、5YR4/2近似のMr.カラーのダークアースを加えて明度を上げた。
リノリウム押さえは前回同様、凹モールドの目地に7.5Y5/4近似のタミヤカラーエナメルのダークイエローを流し込んでいる。
すべての目地にキッチリ色を入れるとクドくなるので、多少拭き取りに差を持たせ、調子を付けている。
現物の写真を見ると、一枚の写真でもリノリウム押さえが見えたり見えなかったりなので、拭き取り加減をランダムに。
リノリウム | 5YR4/2 | ピットロード 艦船カラー PC11 リノリウム + GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C22 ダークアース |
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押さえ金物 | 7.5Y5/4 | タミヤ タミヤカラー エナメル塗料 新ラベル XF-60 ダークイエロー |
鉄甲板
以前調べたとおり、鉄甲板は無塗装油拭の亜鉛鍍金鋼鈑 (所謂トタン) である。船体塗色の鼠色ではない。
赤みに振っているが、亜鉛鍍金鋼鈑の物性上の理由ではなく、隣接するリノリウム甲板との相性を考慮してのアレンジである。実際には色味の無いただのグレーだと思う。
前回調合した5R4/1近似色が、今回の鼠色とも相性が良かったのでそのまま使用……したつもりが、攪拌が不十分だったようで、塗りあがりが5R4.5/1近似くらいになってしまった (笑)
手持ちのMr. カラーに赤みのグレーが無いため、N4近似の「特色セット ザ・グレイ」のグレートーン1を元に、原色の赤を加たもの。
鉄甲板 (亜鉛鍍金鋼鈑) | 5R4.5/1 | GSIクレオス 特色セット ザ・グレイ MT01 グレートーン1 + Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C3 レッド (赤) |
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木部・麻索
短艇内部は、前回の色がくすみ過ぎてしっくりこなかったので、今回はやや鮮やかで黄色みの強い2.5Y6/4近似のミドルストーンとしてみた。麻索の色も同じく。前回とは逆に、少し鮮やかすぎる気が無きにしもあらず。
木部・麻索 | 2.5Y6/4 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C21 ミドルストーン |
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布
白キャンバス部分は、前回は青みに振ったが、今回は素直に生成りの色で。
市販の生成りの帆布のメーカー公表値いくつかの平均値に若干明度を落とした10YR8/1.5近似とした。セールカラー+グレーFS36622+白で調合。
キャンバス | 10YR8/1.5 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C45 セールカラー + GSIクレオス Mr. カラー 新蓋/新ラベル C311 グレー FS36622 + ガイアノーツ ガイアカラー Ex-02 Ex-ホワイト |
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煙突・後檣の黒
煙突と後檣の黒は 、RLM66ブラックグレーとジャーマングレーをほぼ半々に混ぜたN3近似のグレー。
海自の艦艇用黒塗装の指定色N2 [5] を仮定した上での調合、というのは前回同様だが、今回は青みを抜いた純粋なグレーで。機銃も黒染めされていた筈なので、同色にて。
黒 | N3 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C116 RLM66ブラックグレー + Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C40 ジャーマングレー |
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船底塗料
ここは前回同様、鮮やかめのアレンジで5R3/8近似のMr. カラーのレッドFS11136を使用。
実物の色調の再現より、立体物としてのアクセントに重きを置いている。
リアルさを狙うなら、もう少しオレンジ寄りで暗くなる筈だが、それでも、所謂艦底色ほどは暗くないと思われる。
船底塗料 | 5R3/8★ | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/旧ラベル C327 レッドFS11136 |
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軍艦旗・将旗
前回と同様、海軍旗章條令の「軍艦旗」の項の「日照光線 紅」の記載 [6] に従い、5R4/14位の紅色と推定。今回は色相を青みに振らず、彩度だけ落とした5R4/12近似とした。
前回と同様、薄手のラベルシールに印刷して製作。また、「天龍」は1941年 (昭和16年) 当時、第18戦隊旗艦を務めており、戦隊司令の丸茂少将 [7] の将旗が上がっていた筈である。
二次大戦前後の軽巡の将旗の掲揚位置についてははっきりせず、1937年 (昭和12年) の「夕張」では前檣頭 [8] に掲げられているが、真珠湾攻撃時の「阿武隈」では後檣頭 [9] に掲げられている。
これについては詳しくは判らなかったので、艦形の近い阿武隈に倣い後檣とした。
軍艦旗・将旗 | 5R4/12★ | インクジェットプリンターによる印刷 |
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汚しとか
前回は、無彩色のみで汚れを表現したが、単調になってしまったので、今回はやや色味を与えてみた。
艦船の汚しといえば、の赤錆色はなんとなく遺棄された船に見えてしまうので、水垢っぽいイメージの緑色系とした。
「天龍型」を含め、大戦前後の写真から各艦の汚れ方を眺めてみると、目立って汚れて見えるのは海水に洗われる船体のみで、上部構造物や兵装は意外に汚れていない。
これは、海水を被る頻度に加え、甲板上にある物は日常的に手入れをされているためであろう。当時の戦時日誌を読むと、戦時であっても諸装備は各担当部署ごとに数日サイクルで清掃・手入れをされていることが窺える。
従って、上甲板より上は、スミ入れの残し加減で調子を付ける以上の汚しは行っていない。
舷側は、タミヤエナメルでライトグレーとグリーン系の色を混色した何パターンかの「汚れ色」を作り、それを垂直方向に線を描くように塗布、半乾きの状態で適度に残してふき取ることで、舷側のムラ汚れを再現した。
真横から見ると殆ど判らず、斜めや前後から見てやっと判る程度の軽めの汚しで。
さて、製作篇はこれにて終了、あとは、完成写真と総集篇を分けるか否かで、残すところあと1、2回である。
製作そのものは先月、引越前に終えているので、工期約7か月。
前回の駆逐艦3隻で1年半くらい掛かった事を考えると、中々良いペースではなかろうか。尤も、今回の転居で早速小破してしまっているのだが (泣)
もう引越は嫌だ……。
参考書籍
- 『写真 日本の軍艦 第8巻 軽巡I』光人社、1990年
- 衣島 尚一『軍艦の塗装 モデルアート5月号臨時増刊 No. 561』モデルアート社、2000年
参考ウェブサイト
- 「海軍旗章條例 明治二十二年十月」『近代デジタルライブラリー』国立国会図書館所蔵、海軍省、1889年、25頁 ^6
- 「第17・18・19戦隊司令官」『日本海軍人事手帳 (?)』鷂◆Kr61cmWkkQ、2014年8月閲覧 ^6
- 「阿武隈 (軽巡洋艦) – Wikipedia」『ウィキペディア』、2014年8月閲覧 ^9
すべて敬称略。