前回の更新からえらく間が開いてしまったが、今回はB-1化改修の後篇、機首周りについて。
見れば見るほど相違点が湧いてくる感じで、中々難儀なのだが、キットの基本形はしっかりしているので、変な辻褄合わせをせずともディテールが所定の位置に収まってくれるのは素晴らしい。
以前まとめたとおり、B-1とB-2の大きな識別点はラジエターカウルの大きさと、B-1前期型の場合は排気管の形状。カウルフラップの有無は、B-2では標準装備だが、B-1だと有無混在でイマイチ法則が把握できない。
本連載ではお馴染みのたいらい氏が入手したB-1のマニュアルによると、カウルフラップについての記述は無いらしい。
Ju87B-1とB-2の実機マニュアルを入手したので眺めていましたが、主脚の構造が違うのがマニュアルからも確認できました。タイヤを保持するフォークの形状が変わって、B-2で位置が前進してますね。あとラジエターフラップはB-1にはついてないのが確定。項目自体ありませんでした・・・。
— たいらい (@gk0tairai) 2015, 1月 22
よって、今までカウルフラップ付きのB-1とされていた機体は、B-0の増加試作機の一部ではないかと推測するが、確証はない。
細部についてはこれまた、たいらい氏が識別点図解を作製されているので、これを下敷きに確認していきたい。
今回は氏のリサーチにおんぶにだっこだが、使えるものは何でも使うのが私の信条だ。
Ju87B-1とB-2の機首識別点を枠組みで示す。機首右のみにある小インテイク、過給器インテイクの太さ、過給器インテイク上の突起、ラジエター開口部の大きさ。水色枠のラジエーターフラップはB-1でもついてる機体があるので絶対ではない。 pic.twitter.com/l3GBTNcg4p
— たいらい (@gk0tairai) 2015, 1月 12
機首についてはB-1とB-2でかなり相違が多いのだが、前回の脚やプロペラの様に個別独立した相違点ではなく、その殆どがエンジンの換装の影響が外装に及んでいるもの、と考えると判りやすい。
唯一エンジン換装とリンクしていないのが、B-1の途中で変更された排気管で、それ以外はB-1とB-2の境目で一斉に切り替わる。
ラジエターカウル
単独で見るとあまり印象は変わらないのだが、実機写真と比較すると、細くなった効果が判る筈。
B-1→B-2での顕著な変化がラジエターカウルの大きさで、B-2ではラジエターが大型化し、正面投影積が増えた。
前からの写真だと判りやすいが、側面写真だと翼に隠されていることが多く判り辛い。
B-1へ改造する場合、1/72で約1mmほど下端が上がるので、排気管直下で切り離し、削って再接着。また、側面形もB-1の方がやや直線的なので、削ってほっそりさせる。
ラジエター前面に継ぎ目ができるが、丁度この位置に補強板? が付くので、それを再現すると隠れてくれる。
B-2のカウルフラップ部は、B-1だとただのフェアリングなので、分割線を埋め、左右上端カドにある1.5mm径の円形パネルをポンチで抜いたプラ板で再現した。実物の円パネルは、周りと面一か、やや凹み気味に見えるので、器用な人ならスジボリする方がリアルだと思う。
右舷過給機インテーク
ここはラジエターカウルとは逆に、B-2で小型化された。正面形は恐らく同じで、後ろへの絞り加減が変わり、B-1の方が緩やかな絞り込みである。
この手のパーツはイタレリだとキレが無いので、割り切ってつくりかえた方が綺麗に仕上がる。
キットのパーツは概ねB-2の形状で、フチの厚さが不揃いである。ウェーブの4mm径丸ノズルを半切りにしたものを前端に貼り足すことで、フチの整形と前後延長を一挙に行う。
前方からの写真を見ると、内側は機首ベタ付けではなく、インテーク内壁が存在するのでプラ板で追加。
右舷小インテーク
B-1では左舷のみだったプロペラ直後上部にある砲弾型の掘り込み小インテークが、B-2では右舷にも装備された。が、キットでは、そもそも再現されていない (笑)
エンジンカウル後端の小バルジ
これはエンジン支持架を逃がすためのもので、キットでは上側のみ再現されているが、主翼桁辺りの高さにもさらに小さなものがある。
B-2では上部のものがやや小さくなった。
写真を見る限りでは、バルジの変化が支持架形状の変更によるのか、外皮形状の変更によるのか判然としない。
胴体の工作の回で取り上げる予定だが、胴体側にあるエンジン支持架と対になっているので、胴体のパネルラインとの関係性は重要。
本来ならB-1・B-2とも胴体側の風防下端ラインの延長が上部支持架の上端に位置するが、キットのモールドはかなり上寄りなので、切り取ってプラ棒で作り直し。
排気管
前述のとおり、横向きに開口した単排気管がB-1前期型の特徴。
フジミのキットに対応したパーツがあり、使えるかと思ったが、何故か抜き方向に問題は無いのに口が埋まっており、微妙。仕方ないので1から作る。
まあ、思いつきって大抵失敗するよね……。
排気管の断面形は1/72で1mm×1.5mmくらいの角を丸めた長方形。
当然、そんな都合の良い形の汎用素材などないが、如何せん数が多いので、精度面でも手間の面でもできるだけ手数を減らして再現したい。
まず思いついたのが、配線用の熱収縮チューブで、エバーグリーンの0.75mm×1mmプラ棒に被せて加熱したものを輪切りにしてみた。外形は申し分ないのだが、柔らかすぎて正確な長さでの切り出しが難しく、フチを薄く削るのも困難でアイデア倒れ。
結局、基本に立ち返って、エバーグリーンの1mm×1.5mmプラ棒の角を落とし、内側をピンバイスとナイフで掘って再現した。
難しくはないが、左右合わせて12本なので、ひたすら面倒。
後期型に比べると外形の出入りが多く、いかにも洗練されてないのが初期型らしい。
また、B-1前期型仕様の場合、排気管直前の小インテークの形状も異なる。
ふたつ上の実機写真で判るように、前半が凹、後半が凸の砲弾型で、円筒パイプを半埋め込みしたような形をしている。前半部は1.5mm径のドリルを斜めに掘り込み、その上から後半部へ斜め切りしたプラ丸棒を貼って再現。
更に、これもB-1前期型固有の特徴で、排気管後方に砲弾型の小アウトレットから円筒形の細い排気管が覗いている。
アウトレット部は2mm径ドリルで斜めに掘り込み、前縁直線部をプラ板で蓋。先端を開口した1mm径プラ丸棒を差し込み、排気管を再現した。
さて、間の塗料の回を挟み、前回から約1か月半挟まってしまったのだが、その間何をしていたかと云うと、某所から頼まれごとをして模型を作っていたのだ。まだ完成してないけど。
今は諸事情でまだ云えないのだが、燕雀洞をずっとお読みいただいている方には「おっ」と思うようなネタで、いずれここでも何がしかの形で紹介する予定なのでお楽しみに?
参考ウェブサイト
- 「The Ju 87A Anton Series mixed photo album」『Asisbiz.com』2015年2月閲覧