またしても前回から間が開いてしまったが、今回は機首周りの修正の続き、B-1とB-2で共通の修正点について触れたい。
イタレリスツーカをキット仕様のままB-2やR-2として組む時も、機首上面だけは直しておくと印象がグッと良くなると思う。
オイルクーラーインテーク形状の修正
イタレリのB型の機首で最も気になるのは、上面のオイルクーラー周辺の形状。
実機はプロペラの回転方向に応じて、左舷側から空気を効率よく吸えるよう、左右非対称の凝った形状をしている。
ここは文字だと何とも説明しづらいので、写真を見て欲しい。
不時着状態なのがアレだが、こんな有様でもなければ中々この角度からの写真が無いのだ。写真はR型だが、機首部分はB型も同形状。
まず、実機の形状について。
左舷側は側面から上面にかけて、緩やかなエッジを境に前方に絞り込む割と単純な形。
その流れが上面右舷端の壁で途切れ、プロペラによって左から流れてくる空気がオイルクーラーへ誘導される構造 (多分)
故に、左側のインテーク前面は左からの気流を弾かない為に、壁と云うより緩やかで低い畝状の盛り上がりになっている。
イタレリ版のインテーク周りの形状は単独の造形物としてはまとまりがあるが、実機写真と並べると似てない。
次にイタレリのキット。
実機取説のイラストに描かれているインテーク付近の描線をエッジラインとして解釈したのか、上掲の実機写真に比べるとインテーク前面の左右側壁部分にかなりエッジが立っており、平面形もやや前すぼまりだ。
逆に、スピナーへ絞り込みの起点となるエッジは曖昧で表現が弱い。
工作自体はさほど難しくないのだが、今回は3機小隊なので、全機の形状を揃えるのが大変。
キットをベースに盛り削りしたのが上写真。
赤塗りで示した部分がパテ盛りが必要な箇所で、他は削るだけでこの形状になる。
掴みどころのない形をしていて、納得できる形になるまでかなり苦労したのだが、見た目の印象がかなり変わるので、実機に思い入れのある方はぜひ試してみて欲しい。
ポイントは、厳密な寸法よりも、左からの気流を取り込むデザインと、白線で囲った箇所が一枚板のプレス成型品であることの、2点を意識しながら工作する事だろうか。
インテークに比べると割と簡単に直せて印象も良くなる、おススメ。
あと、オイルクーラーのアウトレット部分はやや幅が狭い印象なので、少し広げて6.5mm幅程度にする。アウトレット上面には流量調節用のフラップがあるのでスジボリで表現、サイズは6.5mm×1.5mmの単純な長方形。
また、インテークとアウトレットの間の上面には、キットでは軽くエッジが付けられているが、写真では確認できないので削って上側面ひとつながりの曲面とした。
推力型排気管の大型化
B-1後期以降に装備された、ドイツ機ではお馴染みの推力型排気管だが、キットのパーツはやや細く、フェアリングとの間にスカスカ感がある。
実機は、もっとみっしり詰まっている感じで、力強さに欠けるので作り直し。
屈曲部が上下のフェアリングに隠れているお蔭で、手間を掛けずに大型化できる。
実物は一旦横方向に出た長方形の排気管を後ろに屈曲させて扁平に潰すと云う、割と複雑な形だが、模型的には扁平部分しか見えないのであまり難しくない。
エバーグリーンの1.5mm×0.5mmプラ棒のエッジを落とし、楕円状の断面にしたものを重ね貼りするだけ。
機首側面の開口部が1.2~1.3mm位の幅なので、目分量で削りあわせる。
後端は開口できればベストだが、写真のように軽くノコを当てて溝を切り、ペンで黒く塗るだけでもそれらしくに見えるので、今回はこの簡易方式で。
イタレリのキットの場合、現物合わせで先頭の排気管が0.5mm、2番目以降が2.5mmの間隔になるよう調整すると、実機のバランスに近い感じになる。
省略された小インテークの追加など
ラジエターインテーク前左右に砲弾型の掘り込み小インテークがある。
また、上カウル前端には、B-1は左舷、B-2は両舷に同形状の小インテークがある。
簡単と云いつつ、失敗した形跡が有るのはご愛嬌。
更に、B-1後期以降は排気管フェアリング前端がインテークのフェアリングを兼ねている。
ここは、先の機首上面と同様、排気管周りの外鈑が一枚板のプレスである事を意識すると、形が出しやすい。
また、左舷側後部、右舷の過給機インテークと対になる辺りに、筒型の小インテークがあるので、プラ棒を削って再現した。
共通の修正点は左舷側に集中しており、右側は左右共通のインテークの追加のみ。
インテーク以外のディテールとしては、機首上面小インテークの後ろに円形ハッチがあるので、ポンチで抜いたプラ板で再現。
また、左舷後端の下面にエンジン始動用のクランク穴が開いているので、ピンバイスで直径1.2mmの穴を開けておく。
イタレリのキット、連載開始時から述べているとおり、全体形の良さの割にはディテールの印象が悪く損をしている感があるのだが、機首周りについては形状把握、ディテール共に問題があり一筋縄ではいかない。
特に機首上面は、角度の問題で実機写真が乏しい割に、模型ではきわめて目につきやすいと云う、模型特有のジレンマの起こる個所なので、これからこのキットを作ろうと思う方は、まず機首上面にどこまで手を入れるか、というラインを決めてから、他の部分のディテールアップのバランスを考えると良いだろう。
逆に云えば、実機写真が少ない分、キットのままでも違和感を覚える人は少ないと思われるので、エッジを丸める程度にしてお茶を濁してしまうのも手だと思う。
参考ウェブサイト
- 「Junker Ju 87B Stuka – Bertha Series」『Asisbiz.com』2015年4月閲覧