ハセ新天龍もいよいよ大詰め、今回は塗装。
日誌に記載はあるが写真は無い欺瞞波迷彩を、どう扱うかと云うのが鍵となる。
欺瞞波のパターンを推定する
以前の記事で述べたとおり、1942年 (昭和17年) 6月、「天龍」と「龍田」は戦隊独自の試験塗装を施された事が「第十八戦隊戦時日誌」(以下、「戦隊日誌」) から判る。[1] [2]
具体的には、
- 測距儀と弾薬箱の白塗装
- 船体欺瞞波の塗装
の2点で、残念ながら2隻に欺瞞波を実際に施された写真は見つけられなかった。
故に、推定でパターンを描くこととなる。
日本海軍の欺瞞波塗装で有名なものでは潜水母艦「長鯨」や水上機母艦「秋津洲」の例があり、今回は「長鯨」に範をとってパターンを推定してみた。
「長鯨」は欺瞞波だけでなく、偽の魚雷発射管まで描くと云う徹底 (?) ぶりである。
戦隊日誌には「艦首尾擬波ヲ画ク」とあるため、船体中腹の欺瞞波は省き、公試時の写真などを見ると「天龍型」の艦首波・艦尾波はかなり高く上がるので、艦首尾の頂点は「長鯨」よりは幾分高めに描く。
公試時の「龍田」との比較。高速艦らしく派手に立った艦首波が印象的で、遠目にこれと同じくらいに見えるよう塗り分け線を設定。
また、当期迷彩を施した「多摩」や「木曾」の入渠写真を見ると、白塗料は短期間ですぐ傷んでしまうようなので、やや派手目に剥離表現を施してみた。
基本的な塗り分けをエアブラシで行ったのち、剥離して地の鼠色や艦底色が見えている箇所を面相筆で描きこんでいる。
迷彩された「多摩」。開戦から僅か数か月後の筈だが、波を切る艦首の迷彩はかなりボロボロ。
配色とウェザリング
基本的な色はスクラッチ版と同様なので、そちらを参照されたい。
ただ、鼠色は手持ちのMr. カラーのダークシーグレーがかなり良い色だったのでそちらに変更。
修正マンセルでの近似色がN5なのはスクラッチ版の自家調合鼠色と同じだが、ダークシーグレーの方が僅かに黄色みを帯びており、南洋の日に焼けたグレーに丁度良いと感じたのだ。
ただ、後日現行のダークシーグレーを買ったところ、かなり色調が変わっており、現在この色は入手できないので注意。現行品で旧ダークシーグレーに近いのは、先日の「朝潮型」で触れた、ガイアカラーのねずみ色1号あたりか。
迷彩色の白はMr. カラーのベトナム3色迷彩用ライトグレー。ここ数年、白は専らこればかり使ってる気がする。
鼠色 | N5 | GSIクレオス Mr. カラー旧蓋/新ラベル C25 ダークシーグレー ※旧ロット |
---|---|---|
白 | 5GY 8/0.5 | GSIクレオス Mr. カラー 新蓋 C311グレー FS36622 |
リノリウム | 5YR4/2 | ピットロード 艦船カラー PC11 リノリウム + GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C22 ダークアース |
押さえ金物 | 7.5Y5/4 | タミヤ タミヤカラー エナメル塗料 新ラベル XF-60 ダークイエロー |
鉄甲板 (亜鉛鍍金鋼鈑) | 5R4.5/1 | GSIクレオス 特色セット ザ・グレイ MT01 グレートーン1 + Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C3 レッド (赤) |
木部・麻索 | 2.5Y6/4 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C21 ミドルストーン |
キャンバス | 10YR8/1.5 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C45 セールカラー + GSIクレオス Mr. カラー 新蓋/新ラベル C311 グレー FS36622 + ガイアノーツ ガイアカラー Ex-02 Ex-ホワイト |
黒 | N3 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C116 RLM66ブラックグレー + Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C40 ジャーマングレー |
船底塗料 | 5R3/8★ | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/旧ラベル C327 レッドFS11136 |
以前の作品では、錆より水垢汚れを強調していたのだが、時浜次郎氏の護衛艦レポートを見て認識をあらためた。
当時とは色材も異なるので厳密には汚れ方にも違いがある筈だが、大まかな傾向として錨鎖まわりや舷側構造物のキワなど、主に海水が流れるところは赤錆、対して、甲板の排水樋のように、海水と生活排水等が入り交じって流れるところには黒い水垢、そして、常に海面と接する喫水線付近は白い塩 (?) が付着している。
現用艦と同じ汚れ方をするのか定かではないが、説得力は出た気がする。
今回はほぼ上記ルールに則り汚している。また、上甲板より上の汚れが目立たないのは、前記の護衛艦でも同様に見えたので、こちらは従来通りスミイレのみ。
次回はいよいよ最終回、連載の総括と完成写真である。
HJ掲載との兼ね合いで変則的な構成になってしまったので、次はよく考えないとな……。
参考ウェブサイト
- 『国立公文書館アジア歴史資料センター』
- Ref. C08030354300「昭和17年6月1日~昭和17年6月30日 舞鶴鎮守府戦時日誌 (3)」防衛省防衛研究所所蔵、舞鶴鎮守府、1942年、21頁 ^1
- Ref. C08030060600「昭和17年5月1日~昭和17年7月31日 第18戦隊戦時日誌 (3)」防衛省防衛研究所所蔵、第十八戦隊司令部、1942年、3頁 ^2
全て敬称略。