カトキ版RX-78-1小史 – 1/144でHGオリジン版ガンダムをプロトタイプガンダム風に作る: 序

今を遡ること3年ほど前、モデラー仲間内で当時旬だったHGオリジン版RX-78を肴に皆で競作しようぜ、と云う企画が始まった。私はプロトタイプガンダム担当と云う事で、取りあえず銀黒赤に塗っときゃソレっぽく見えるでしょ、と始めたものの、例によって沼に嵌る。


このプロトタイプガンダム、知名度と人気の割にはキットに恵まれないことでお馴染みで、プラキットとしては1983年(昭和58年[1] のMSV版と2014年(平成26年[2] のMG版の2種類しか発売されていない。

MSV版プロトタイプガンダム設定画
MSV説明書掲載の設定画。準備稿に存在したディテールをそのまま作品世界の「プロトタイプ」として使う、と云う頓智の利いた感じがあの時代ならではのおおらかさがあって面白い。

MSV版プロトタイプガンダム
旧キット……と云いたくなる処だが、最初にして未だ1/144最新キット。全体のプロポーションは流石に前時代的だが、ディテールは設定画にあるノーマルガンダムとの差異を丹念に拾っている。

MG版プロトタイプガンダム
顔の造形など、旧キット世代風のアレンジだが、上記MSV版と較べるとプロポーションは完全に現行ガンプラのそれ。だが単体ではそれを感じさせないアレンジの上手さが光る。

同じRX-78兄弟のG3がMSVでキット化されなかった代わりに、今世紀に入ってからは78のキットが出るたびにカラバリ展開でたびたびキット化されるのとは対照的で、ガンプラが単色性形の頃は全く同型のため差別化が難しかったG3だが、多色成形では開発データをそのまま流用して色替えだけで展開できるのが強みになっている感がある。プロトに関しては逆に、細部の違いが多く新規設計パーツが増えてしまうのが足枷になっているのであろう。

一方、アクションフィギュアやトイでは何度か立体化されており、その中でも名前を出して度々リデザインしているのはカトキハジメ氏で、私の知る限り3度別パターンの画稿を発表している。

ベースキットに寄せたおとなし目リファイン: MG Ver.Ka改造版

最初は2003年(平成15年)刊行のキャラクターモデル誌のグラビアに描かれた[3] MG Ver.Ka用RX-78の画稿をベースにしたバージョン。前面しか掲載されておらず、背部と右側面の詳細が不明で、右腰のホルスターはなく左右対称、前腕の段差も省略されており、カトキ版RX-78-2の色替えと云った雰囲気

キャラクターモデル誌掲載イラスト
画像はムック「アプルーブド ガンダム」に再録されたもの。誌面デザインこそいかにも20年前と云った垢抜けなさがあるが、本体のデザインはそこまで古びた感じが無い。

また、同誌掲載の作例として、MG Ver.Kaベースのプロトの作例が掲載されており、ほぼ画稿を踏襲しているが右腰ホルスターは大河原画稿風に改造されている。これが未発表の背面画稿に描かれているのか、或いは製作者の松本隆氏独自のアレンジなのかは判然としない。

キャラクターモデル誌掲載イラスト
同じく「アプルーブド ガンダム」に再録されたもの。これも20年前かつ悪名高きMG Ver.Kaベースとは思えないクオリティ……と云うか、これをそのまま1/144にしたキットが欲しい。

機能と構造の再解釈に挑む: GFF

次いで同年発売[4] の「ガンダムフィックスフィギュレイション」、通称GFF版で、同時期にカトキ氏が手掛けた初代HGUCガンダムに通じる大河原/安彦画稿版に近いユニット構成。

GFF版プロトタイプガンダム開発画稿
全体の印象は前者とかなり異なるが、ビームライフルのアレンジや脇腹だけ暗いグレーなど共通要素も見受けられ、コンセプトが違うだけの同時期のデザインワークであることが見て取れる。

GFF版プロトタイプガンダム
メーカー見本ではガレキばりのシャープな写真だが、商品版は20年前なりのクオリティの成形でと仕上げで「模型」の代わりとして見るには少々厳しい出来。

概ねMSV画稿に忠実なアレンジだが、使い方が判らないことでお馴染みの右腰の「ホルスター」は元画稿よりも名前を重視し、ピームスプレーガンがマウントできる[5] 全くの別物としてアレンジされている。前述のキャラクターモデル誌の刊行が3月で、GFF版の発売が6月なのでこの順序としたが、実質的には並行して2パターンのアレンジが進められたものと思って良いだろう。

唯一のオリジン版プロト: GFFMC

3度目はオリジン版でプロトタイプガンダムに相当する「試作機1号」、漫画版オリジン冒頭に出てきたゴーグルアイの黄色いアイツである。GFFの後継シリーズである「GUNDAM FIX FIGURATION METAL COMPOSITE」、通称GFFMCにて2020年(令和2年)に発売[6] された。
原典の大河原画稿発表からあまり時間が経ってないためか、前2者より解釈揺れが少なく、大河原画稿における1号機と2号機の差分を、アニメ・模型開発用画稿であるカトキ版2号機へ素直に置換えた感じ

GFFMC版プロトタイプガンダム
上記とは全く別物のデザインではあるが、カトキ版プロトとしては最新の立体。

カトキ信者の私としては、MSV版ではなく、これら3種のいずれかに寄せたい、と考えるのだが。

今回作るオリジン版の「RX-78-02」は肩キャノンが付属しており、一見、色替えだけでいけそうだが、残念ながらゴーグルアイが無いため、ただ黄色く塗っても全然それらしくならない。あと、デザインがあまり好きじゃない(笑)

HGオリジン版プロトタイプガンダム
HG版2号機、所謂アムロ機の素組。これもアニメ用カトキ画稿準拠のため基本アレンジは似ている。ゴーグルアイの他、ヘリウムコアや膝のスリットなど細々相違点はある。

てことで、GFF版かキャラクターモデリング誌版のいずれかに寄せると云う選択肢になるのだが、作例仕事で度々中断し、その都度微妙に目指すものが変わっているので、最終的にはどれにも似てないキメラになりつつある今日この頃である。一応、構成要素は総て揃ってるのでここから大きく変わらないとは思うのだが……。

HGオリジン版ガンダムのプロトタイプ化
現時点での状態。お手本にした筈のGFFと並べても全く似てない。「何者なんだ、おまえは!?」


参考ウェブサイト

参考書籍

  • 『カトキハジメ デザイン アンド プロダクツ アプルーブド ガンダム』角川書店、2003年、28頁 ^3、100頁 ^4、133頁 ^5

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