1/144 HGUCディジェを、少ない手数でナラティブ風に仕上げる

先日、ガンダムNTを鑑賞してきた。UCの外伝が下敷きらしいのだが監督が違う所為かMS戦の描写の印象が異なり、UCが人の動きを下敷きとした「見栄を切る」アクションが光ったのに対し、ナラティブでは縦方向の動きを活かした「メカならでは」の動きが魅力的だった。

中でも冒頭で登場したディジェ対アンクシャの戦いは印象的で、発売間もないHGUCディジェを勢いで作ってしまった。


まあ何はともあれ、当該シーンが今まさに無料公開されているので視て欲しい。

ほら、ディジェがこんなに格好良いとは思わなかったでしょ?

で、キットである。HGUCディジェは同機のプラキットとしては3作目にあたる。
放送当時の1/44、所謂旧キットと、数年前に発売されたRE: 100に続くもので、模型的アレンジの激しいREに較べるとスッキリしたライン取りとメリハリの利いたシルエットが特徴的だ。

HGUCとRE: 100版ディジェの比較
左がHGUCで右がRE:100、メーカー写真より。
両者とも中々目に痛い青緑だが、なんでこんなに色が違うんだろう?

ナラティブに登場したディジェの画稿は両者の開発画稿ともまた異なるようで、かなりどっしりとした体形が印象的。
とは云え、先にご覧いただいた通り、作中では闇夜をを高速で暴れまわっているので、お手軽に気分を味わうだけなら色替えだけでも充分雰囲気は出るとみた。

HGUCとNT版ディジェの比較
そもそもボリュームの捉え方からして別物なのだが、爪先や前腕などユニット構造そのものが異なる部分も多い。

各ユニット形状の他、装備もZ登場時とは異なる。隊長のミシェル機は左肩に角型投光器が付き、また、全機ライフルはリゼルの角型Eパックを装備したものにアップデートされている。ここは流石にスルーして色替えで誤魔化すのは厳しい。

ナラティブ版ディジェの銃
全体が映ってないのが惜しいが、後端のEパックが角型になり、右側面にフォアグリップ (?) が追加されているのが判る。また、画像では見えないが銃身先端が延長されているようだ。

そこで画期的 (?) かつお手軽な解決法、そう、右腕を切り飛ばしてしまうのだ。
劇中最も印象的なアンクシャと格闘した機は、登場まもなく右腕を銃もろとも切り落とされ、あとは全て左手の薙刀のみで戦っているのだ。

当該シーンはこの辺り、アンクシャもディジェも欠損をものともせず斬り合ってるのがアツい。

ナラティブ風HGUCディジェ
クリックでちょっと拡大、とりあえず劇中の夜間風に撮ってみる。ほら、暗がりだとそれっぽい。

と云う訳で、今回は出来るだけ少ない手数でナラティブ版ディジェを目指してみた。弄ったのは以下のあたり。

まずは右腕をぶった切る

斬り飛ばされた腕は断面を薄く削り、アクセントとして関節のムーバブルフレームからケーブル類が垂れ下がった風の表現を施す。

ナラティブ風HGUCディジェの腕
劇中では真っ直ぐ切れてるだけだが、それではつまらんので小細工。

薙刀を振るう左手は逞しく

生きてる方の左手は、手首が第2世代以降とは思えないほど小さく華奢なのに違和感があったので、逆に第1世代にしては大きすぎるHGUC寒ジムの左平手を加工して握り手に。

ナラティブ風HGUCディジェの手首
キットの手首はHGUCグフカスタムあたりと比べても一回り小さい。

下半身はどっしりと

プロポーションはほぼ文句なしだが太腿がスカートに隠れてほぼ見えず、ディアス系の雰囲気が薄く感じられたので太腿付け根の回転軸部分で1.5mm延長&股関節軸で2mmガニマタ化し、太腿を出しつつ全体のシルエットを重MS的ピラミッド体型に。

ナラティブ風HGUCディジェのプロポーション調整
キットのバランスも良く纏まってはいるのだけど、ちょっと優男すぎる気が。

ナラティブ風HGUCディジェのプロポーション調整
どうせ角度的に見えないので、色すら塗らずプラ材挟んだだけ。

あとは細部を適当に

バンダイエッジが目立つ箇所を削り、脛前の足首カバー先端の形状がモッタリしてたのをナラティブ版風に変えたくらい。
あと、動力パイプは塗料が乗らなそうだったので鉛線をぐるぐる巻きしたものに置き換えた。

配色は明度にメリハリ、彩度に統一感、青の遣い方に整合性を

配色は今回勢いで調合したのでちゃんとデータは取ってない。
アニメ設定では明度・彩度とも低く、かつ寒色寄りに纏まっており、そのまま模型に塗ると露出と色温度設定を失敗した写真みたいに見えそう。

本体色の紫みのグレーはそのまま生かし、他でバランスを取りにゆく。まず胴体の紺色はドムっぽい印象になってしまうので赤紫に振る。
黄色はサンディブラウン瓶生だが、胴体との対比でそこそこ鮮やかな黄色に見える筈。
赤は最初あずき色を塗ったら鮮やかすぎて落ち着かなかったのでGM鉄道カラーのマルーンA。

黄と赤はアニメ設定では黄色が沈みすぎ・赤が鮮やかすぎで落ち着かないのを、いずれも本体の濃淡紫の彩度と喧嘩しないバランスに近づけている。
明度自体は設定とあまり違わないのだ

ナラティブ風HGUCディジェの配色
主に黄色と赤の彩度調整でバランスを取っている。

あと、アニメ設定でしっくりこないのがバーニアノズルと動力パイプが似たような水色に塗られているとこ。
けどここでノズルを赤くしたりただの焦げ色にするのも芸が無い。そこで、動力パイプはソリッドな水色のエアスペリオリティブルー、ノズル類は銀の上から青竹色の上澄みを吹いて青焼け風仕上げとしてみたがどうだろうか。
メカ色部分はセンチネルからの伝統のネイビーブルー、第2世代MSはこれがしっくりくる。

ナラティブ風HGUCディジェの配色
個人的に、今回の配色アレンジで最も気に入ってる処理だが、如何せん地味。

マーキングには些かの理屈っぽさを

コーション類は手持ちのデカールストックがダメになっていた (なんせMS塗ったのが10年ぶりだ!) のでハイキューデカールの144用を使ってみた。白が全く透けず素晴らしい品質だが、文字組に違和感。

ナラティブ風HGUCディジェ
クリックでやや拡大。前述のプロポーション微調整以外はキットのままのバランスだが、脛回りなどのメリハリ感がカッコいい。

英語の本でもサイトでも見てみると判るが、大抵の文章は1行目より2行目が短い。
だが、ハイキューのコーション類は何故か一行目の方が短いものが多いのだ。
単語の区切りの都合で絶対にあり得ない訳ではないのだが、流石に多すぎるとアレなので、ほとんどのデカールを天地逆さまにして貼っている。

ナラティブ風HGUCディジェ
クリックでやや拡大。バックパック側面のラック部分はナラティブ版にはなく、キットの形状もピンとこなかったので切り飛ばしてパネルラインも埋めてしまった。

また、文字列に付随するラインとか四角形とかもあまり必然を感じなかったのでほぼカット。
今はコーション類もグラフィカルに貼るのが流行りっぽいので、時流に沿ったデザインではあるのだろうけど、私はなまじスケール物を齧ってるだけにどうしても位置や文字列の長さに幾許かの意味を盛り込みたくなってしまう。

ナラティブ風HGUCディジェの配色
左側頭部はコクピットハッチなのでコーション類を過剰気味に。他のMSと機構が大きく異なる部分なので注意書きも多かろう、と云う想定。


いつもなら、全ユニットのエッジの処理や断面厚の調整なんかに手をつけて、結局途中で飽きてしまうのだが、今回は敢えて弄る箇所を絞って映画の余韻が残ってる間に完成を目指した。私にしては珍しく、なんと1週間ほどで完成している。
先日、ツィッタァでプロモデラーの林君 (雑誌ライターとしては彼の方が大先輩だが、実は学生時代の模型部の後輩なのでエラソーに君づけで呼ぶのだ、私は) が呟いていた言葉がまさにそれ。

なまじ経験を積んで引き出しが増えてしまうと、出来るが故にあれもこれもと欲張ってしまい、結局意欲が保てないのだ。今回、「作ってて楽しい」うちに完成できたのは、まさにその「しない勇気」の賜物であろうと思う。

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