先日、モデルアート誌の増刊「帝国海軍 駆逐艦 総ざらい」が発売された。
ウォーターラインシリーズをはじめとした各社1/700洋上モデルに特化した増刊で、コンセプトが一昨年刊行のネイビーヤードの単行本「日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編」とモロに被ってるな、と感じた。
そこで、実際のところどうなのか、両書の内容を独断と偏見に基づいて比較してみた。
予めお断りしておくと、私は各模型誌を定期購読しておらず、必要な号だけ買っているので、この2冊の記事の内、何が書き下ろしで、何が再録なのか、といった情報は把握していない。
よって、ツッコミの中には、「それは再録の都合で仕方ないんだよ」ということが含まれているかもしれない。
もしそれらに基づく大きな見落としや誤解があれば、可能な限り追記・訂正したいと思うので、コメント欄等でご指摘いただけると幸い。
両書に共通すること
- 対象艦艇は、太平洋戦争に参加した日本海軍籍の駆逐艦。すなわち、1940年 (昭和15年) 以前に全艦除籍された型は含まれない。
- 対象キットは1/700洋上モデルのみで、1/350や1/200などの大スケールキットは、掲載外。また、1/700フルハルモデルについても限定的な扱いである。
- キット評・作例記事・実艦解説と考証を柱とした構成。
ここまでだと、やはりコンセプト丸被りのように思えるのだが、実際に読み比べてみると、意外に興味深い違いがある。
以下で、それらの違いについて触れてみよう。
主要記事の比較
帝国海軍 駆逐艦 総ざらい | 日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編 | |
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キット評 |
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作例 |
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実艦解説と 考証 |
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実際に比べてみると、主題が同じだけで、方向性は共通のものが無いんじゃないかってくらい違った。
じゃあ、上記を踏まえて、両者がどんな人に向いてるだろう、と考えてみたのが、以下。
作風別、買うならどっち?
帝国海軍 駆逐艦 総ざらい | 日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編 | |
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初心者 | 艦船模型固有の基本工作や部品の取り扱いについての記事が便利。 また、作り込みレベル別の比較は、どれくらいの仕上がりを目指すか、という目標設定に役立つはず。 | 作例記事は基本工作や艦艇の知識がある事を前提としたつくりなので、入門用の一冊としてはやや敷居が高いかも。 |
素組み派 | キットレビューが欠点をスルーしているので、素組み用購入ガイドとしては微妙……。 | 全艦型の素組状態の写真が掲載されているので、キット状態の出来の良し悪しの判断に役立つ。 |
考証・ 艦型重視派 | 「特型」の各サブタイプの作り分けについては、図版も充実しており、かなり役立つ。 それ以外の艦型については、やや物足りなさがあるかと。 | まさに考証・艦型重視派の為の本。 文字資料だけでは判り辛い船体ラインの修正などは図解されており、本書の記述をベースに他の資料で裏を取ったり情報を補完したりすることで、一から調べるよりも、かなり効率よく工作が進められるはず。 |
ディテール 重視派 | 全体の密度感のバランスのとり方については、各製作記事の作風に良い意味でばらつきがあり、好みのものが有れば参考になるはず。 また、兵装関係は主要兵装アフターパーツの比較と、各社装備セットのレビューに約1/3の誌面を割いており、かなり充実している。 | 岩重氏は作り込みよりも、適度な省略を是とする作風なので、近年のMG誌の様な超絶ディテール工作系を目指す方は、もの足りなさを覚えると思う。 |
敢えてどちらか一方となると、こんな感じなんじゃないかと思うが、正直、予算が有るなら両方買った方が幸せになれると思う。
という訳で、久しぶりに良い買い物をしてテンションあがったので、書評などしてみた。
ではまた。
書籍情報
- 『モデルアート3月号臨時増刊 (通巻889集) 艦船模型データベース番外編 (1) 帝国海軍 駆逐艦 総ざらい』モデルアート社、2014年
- 岩重 多四郎『日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編 模型で再現 第二次大戦の日本艦艇』大日本絵画、2012年
何故か両方、緑の表紙だねえ。後発のMA増刊の方が意識して狙ってきた?