今や新製品でもなんでもないのだが、一昨年モデルアート誌に新製品作例として掲載された「夕雲型」をあらためて解説したいと思う。
初回はまず、キット概要と連載の方向性について。
2007年の「青葉型」以来、久しく旧作リメイクが無かったハセガワだが、ゲーム需要を受けてか2014年の「赤城」以降精力的にリメイクを行うようになり、WL駆逐艦の中でも牧歌的な出来だった「夕雲型」も2017年に見事現代的フォーマットで甦った。
1971年の初版発売から46年、実に半世紀ぶりのリニューアルである。
余談ながら、「夕雲」なんてリニューアルしなくてもピットロードの新しいのあるじゃん……と思ってたが、もはやピット「夕雲」も20年選手のベテランキットだった。老いって怖い。
クリックで拡大。新版ハセ「夕雲」登場までの定番、ピットロード「夕雲」との比較。ディテール解釈の他、艦尾平面形なども結構違う。
旧キットでは増設機銃などの年次変更のみでのラインナップだったが、新版では建造時期による艦橋やマストなどの差異もフォローされており、「夕雲」が「風雲」までの初期型、「早波」が「長波」~「浜波」までの中期型、「朝霜」が「沖波」以降の後期型に対応している。
なお、前期・中期・後期と云う呼び方は公式なものではなく、外形の変化に合わせて便宜的に名付けたものである。
「夕雲」のキットが該当する初期型は、後檣三脚の開きが大きな「陽炎型」に似たスタイル。
「朝霜」のキットが該当する後期型は電探室を内包し、下部艦橋後端が左右に拡張されている。
また、後日発売された「朝潮型」とは部品の共用化が図られており、WL共通ランナーやピットロードの装備セットの様に兵装と艤装類が独立したランナーにまとめられている。
装備品の表現は、WL共通ランナーとピット新装備セットの中間くらいでクセが少なく使いやすそう。他社の「陽炎型」や「白露型」あたりのディテールアップに使っても良いと思う。
詳細は後の回に譲るが、リニューアルを待たされた分、基本形状の把握やバリエーション再現のためのパーツ構成など良く練られており、「夕雲型」としては勿論、「陽炎型」を含む1/700「甲型」キットの中でも最も表現と組みやすさのバランスに優れたキットのように思う。
本連載では、基本的な形状の検証と各艦の相違識別のふたつを軸として進めてゆこうと思う。
写真引用元
- 福井 静夫『写真 日本海軍全艦艇史』KKベストセラーズ、1994年、628-630頁
全て敬称略