今まで艦船ネタが続いてきたが、今回は毛色を変えて空モノである。
最近、二次大戦期の固定脚機がお気に入りなので、ドイツ空軍のJu 87「スツーカ」を1/72で作ってみようと思う。
スツーカと云えば、電撃戦の立役者のB型か、「ソ連人民最大の敵」ルーデル大佐のG型だが、今回は武骨な鼻面が特徴のB型で3機小隊を組ませたい。
1/72のJu 87 B、主要3者の概要
2014年現在、1/72のJu 87 Bのキットはフジミ、タミヤイタレリ (以下、イタレリ)、エアフィックスの3者が比較的容易に入手できる。
イタレリ版の初出は、モデラーズ・プレス・ジャパンの記事によると2011年らしいので、恐らく国内で容易に入手できる72スツーカの最新キット。
ただ、最新キットにしては、細部や精度が怪しく、もしかしたら既存品の箱替えか金型改修品なのかもしれないが詳細不明。
モールドの印象は悪いが、機首上面のオイルクーラー周りなど、いかにも航空機らしい形状で素性は悪くなさそう。
フジミ版は開発時期がはっきりしないが、1990年頃には店頭で見かけた記憶があるので、80年代半ばの開発か? シャープな凹モールドなので、少なくとも70年代と云う事はなさそう。
また、B/R型の基本的なキット仕様はB-2/R-2型だが、ボーナスパーツと小改造でB-1/R-1としても組めるようになっており、説明書に改造点も図示してあって好感が持てる。
エアフィックス版は、model-making.euのパーツ写真を見る限り、最も古参キットで、派手な突出しピン跡があるキャノピーや牧歌的な排気管など、今日的基準で真面目に作るには厳しい感じ。但し、3者の中で唯一搭乗員付きなのは私的に高評価。
今回は、現代的フォーマットのイタレリ版とフジミ版を比較検証してみる。
平面形
気になる点は3つ。特に、イタレリ版とフジミ版で形状把握の最も異なるのが主翼平面形。
上から見るとさほど印象に違いが無いが、下面は主脚~ダイブブレーキ~ETC50ラックと隙間なく構造物が連なるため、意外と気になる。
白線が実機の主要部、赤線がダイブブレーキ、それぞれの幅。青線がキットの対応箇所。[1]
イタレリ (タミヤ箱) 品名: ユンカース Ju 87 B-2/R-2 スツーカ 品番: 60776 | フジミ 品名: Ju 87 B/Rスツーカ 品番: F13 | |
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主翼外形 | 外翼後端折れ角が1.5mm程内寄りで、動翼左右の隙間が目立つ。 翼端の絞り込みはやや甘めだが全幅や脚間はほぼ正確。 | 脚間が3.5mm位広く、外翼後端折れ角が1.5mm程内寄り。 また、翼端の絞り込みがややきつめ。全幅はほぼ正確。 |
翼下装備 | 外翼後端折れ角とETC50の位置関係は概ね正確。上記折れ角の誤差分だけ内寄り。 | 外翼全体に対するETC50の位置は正確だが、後端折れ角との位置関係は再現されていない。 また、ダイブブレーキが1.5mm程短い。 |
胴体 | 特に気になる要素は無し。 | 後部胴体のラインがやや膨らみ気味で、太目の印象。 |
この写真では、両者ともダイブブレーキとETC50ラックが後ろ寄りに見える。
ただ、後掲の側面写真ではほぼ一致するので、これは私の写真の撮り方の問題だと思う。
全体的に外形把握はイタレリ版の方が的確。
気になるのはダイブブレーキやや短いのと、動翼同士の妙な隙間くらいか。
フジミ版は脚間が広い分、ダイブブレーキが短い。下から見ると、ここが最も気になる。
ただ、上方から見たときには安定感があり、アレンジとしてみれば格好良いので、ダイブブレーキを重視しないならフジミ版も悪くない。
ETC50ラックは両者とも位置が微妙で、実機写真で判る通り、本来は翼後端折れ角の前方延長線と2基のラックの中心線がほぼ一致する。
イタレリ版は、折れ角とラックの関係を優先して全体位置が内寄り、フジミ版は全体位置を優先した結果、折れ角とラックの関係は無視されている。
あと、写真でも僅かに写っているが、フジミ版は後部胴体の絞り込みが弱く、やや太い。
正面形
気になる要素は3つ。正面形でも外形把握はイタレリ版優位だが、平面形に比べ一長一短。
白線が実機の主要部で、赤線がダイブブレーキの幅。青線は3者の上反角。[2]
イタレリ (タミヤ箱) 品名: ユンカース Ju 87 B-2/R-2 スツーカ 品番: 60776 | フジミ 品名: Ju 87 B/Rスツーカ 品番: F13 | |
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主翼 | 外翼の上反角がやや不足し、左右不揃い。 | 外翼の上反角がかなり不足気味。 |
胴体 | キャノピー上端が角ばりすぎ。 | 気になる要素は無し。 |
主脚 | 気になる要素は無し。 | 脚間が3.5mmほど広い。 脚柱部分が細すぎ、やや内股気味。 |
実機写真と比較すると、両者とも外翼の上反角が不足気味である。
比較用写真が飛行中なので上反角が強めに出ているのかと思ったが、有名な日本陸軍のA型の正面写真も飛行中のそれと概ね同じ角度で、やはりキットの上反角は足りないと思う。
また、両者とも水平尾翼の幅が不足しているように見えるが、これは部屋の都合でキットの撮影距離が短すぎたため。
パーツの寸法を測ると、ちゃんと実機写真の全幅との比率に合致する。
イタレリ版はキャノピー天辺角が角ばっているためやや頭でっかちにみえる。
また、先の平面写真でやや外にずれて見えるダイブブレーキが、正面写真では概ね正しい位置に見えるので、これはキットの解釈で合っているのかなと思う。
フジミは前述の通り、脚間が広く、また脚柱カバーの幅も不足しているなど、相違点が足回りに集中している。ただ、胴体・キャノピーの正面形はイタレリ版より似ている。
側面形
ここも気になるのは3点。ただ、基本的には両者よく特徴を捉えており、平面・正面に比べると微細である。
黒線が実機の主要部の長さで、赤線がダイブブレーキの前後位置。青丸が主な相違点。[3]
イタレリ (タミヤ箱) 品名: ユンカース Ju 87 B-2/R-2 スツーカ 品番: 60776 | フジミ 品名: Ju 87 B/Rスツーカ 品番: F13 | |
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カウリング | 上面のオイルクーラー排気口がやや小さい。 | 上面のオイルクーラー部が吸排気口とも小さく、平板な印象。 |
機首下面 | 特に気になる要素はなし。 | カウリング直後の傾斜が切り上がり気味。 |
キャノピー | 前席後端の段差部分の後退角がやや強い。 | 前席後端の段差部分の後退角がやや強い。また、 後端の「尾鰭」の部分が短く、胴体と面一。 |
やはりイタレリ優位だが、今までほど目立つ差異は無い。
オイルクーラー周りは吸気口が左右非対称で、ちょっとした角度違いで割と形状が違って見える。詳しくは製作篇にて。
キャノピー後端はイタレリ版が正しく、フジミ版の解釈だと後方へ開くことができない。
機首下面は気になると云えば気になるが、ここは250kg爆弾を付けると影になってあまり判らない。というか、実機写真のこの部分が悉く影になっていて判り辛い (笑)
総評
外形比較だと、総じてイタレリ版の造形が的確で、実機に似せたいならイタレリ一択。
一方、全体的なパーツ精度の甘さや、冒頭に述べた異様に太い窓枠モールド、ダルいスジボリなど、キットのまま組んだ時の印象はフジミより一段落ちる。
従って、ストレスなく組めて、精密感のある模型が欲しい場合はフジミに軍配が上がる。
今回は、一度気付いてしまったダイブブレーキの件が気になって仕方ないので、イタレリ版を製作してみようと思う。
今のところ、大きな課題はふたつ。キットのモールドが全くあてにならない窓枠の表現をどうするか、と、全体的に太いスジボリをどうするか。
私はスジボリが苦手なので、総彫り直しはできるだけ避けたいが……。
といった訳で、「燕雀洞」初のエアモデルネタである。
記事だと最初から比較用に2社のキットを買った風だが、ツィッタァをご覧の方はご存じの通り、元々はフジミのキットに手を入れていたものの脚間とダイブブレーキの位置関係の修正に頓挫、イタレリ版を追加購入したという体たらくである。
イタレリは窓枠もスジボリも倍くらい太いんだよ……店頭で比べたらフジミ版買いたくなるでしょ?
イタレリ版は店頭で見たときのモールドの印象がかなり悪く、当初は眼中になかったのだが、第一印象に反して実にデッサンが良い。
今は通販サイトなどでパーツ状態の写真が事前に確認できるので、店頭の印象だけで判断するのは早計だったなと反省した次第。
参考ウェブサイト
- 「Bundesarchive Photos 1933 – 1945..+ all fields of WWII」『Histomil.com』2014年11月閲覧 ^1
- 「Stuka the Aerial Artillery of the Luftwaffe for the Wehrmacht」『finnegan2749』2014年11月閲覧 ^2
- 「andrea-kurami-i-dzhankarlo-garello-italyanskie-pikirovshchiki」『alternathistory.org.ua』、2014年11月閲覧 ^3
※ ロシア語サイト 正確な表題がどの箇所か不明のため、URLの記事名部分? とドメイン名を表記。
キャノピー工作にかかる時間と仕上がりを考えたら
別売りのエンビパーツがベストと思うのですがどうでしょう?
スツーカのキャノピーのフレームは外側と内側に分かれてるのもネックですし
10TPさま
はじめまして、コメントありがとうございます。
そういえば別売パーツを遣う手があったか、と今しがた検索してみたのですが、「1/72 Ju87用 キャノピー イタレリ」などのキーワードでもそれらしき商品無し……。
もしご存知でしたら、メーカーや商品名など教えて頂けないでしょうか。
お返事ありがとうございます
何分、飛行機を作ってたのはかなり前なので今は売ってないのかもしれません
塩ビ製キャノピーをセットにして売るメーカーがあって
確かスコードロンがバラにして売ってた記憶があります
Ju87はなかったかもしれませんが、昨今のアフターパーツの充実振りを考えると
何らかの形を変えて売ってるのでは、と思いまして書き込みしました
10TPさま (ですよね?)
早速の情報ありがとうございます! 早速調べてみたところ、スコードロンがフジミ用のものを出しているようです。関連会社? のクリアバックスのスツーカ用は他機種と纏めてあって値段も高めなので微妙ですね……。
今のところ通販サイトの不鮮明な写真しかないので出来は不明ですが、比較的安価なので情報を集めて購入を検討してみます!!
すみません、名前を入れ忘れました
参考にはなりそうで良かったです、今回のようにたまに飛行機を作る場合だと
セットはあまりにも無駄がでかすぎますしね
クリアバックス(思い出しました)が商品を展開しだしたのはかなり前の話なので
別のメーカーも同様なものを出してるかもしれませんね、なんせ各メーカー各機体のキャノピー専用のマスキングまで出てるようですから
10TPさま
どうも最近はバキュームキャノピーよりキットパーツ用のマスキングシートの方が優勢の様ですね。
さて、昨日のスコードロンのキャノピー、国内で1店舗だけ通販店を見つけたのですが、売切れもしくはシステムエラーの様で、注文叶わず頓挫してしまいました。
さしあたり、キットパーツを磨いて枠を再生しようと思いますが、大抵、作業が粗方終わった辺りで再販されたりするんですよねえ (笑)