本日11月15日は、形式番号に因んだ「いいギャンの日」らしい。特にそれに合わせた訳ではなく、たまたま書きあがったので「HGUCギャン・クリーガー」製作記の後篇である。
原典の「ギレンの野望 ジオン独立戦争記」(以下、「独戦」)登場時から、「ギャン・クリーガー」の見た目ででどうにもしっくりこないのが配色。
ゲームで活躍したのはこの色なので、思い入れが無いではないが、せっかく作るなら一年戦争の時期にありそうな感じに塗ってみたいのだ。
画像クリックで拡大。まずは完成状態、長大なビームランスの所為でガンプラにしては珍しく横長構図の全身像。
作品世界に則った配色にしたい
初代「ギレンの野望」では「マ・クベのギャン」を銀色と解釈し、「量産型ギャン」を金色に塗る、と云う、元の世界観を活かしつつ頓智を利かせたカラーリングが気に入っていたのだが、独戦の「ギャン」バリエーションはいまいち意図が良く判らない。
「クリーガー」は紫・黒・赤の配色だが、原型機の「ギャン」にも他のジオン系MSとも配色パターンに共通性が無く、別作品のメカが紛れ込んでしまったような違和感があった(デザインそのものは格好良いのだが)
ゲームCGで映りの良いものが無かったので、メーカー写真の抜粋。キットの方が若干紫が明るい気がするが、配色はほぼゲームのままだと思う。
なんとか1年戦争時のMSっぽい色にしたい。最初は、同じ紫のツィマッドつながりで「ドム」の紫・黒・グレーにでもするかな、と考えていたのだが、ここで突然閃いた。このデザインなら同じ「ドム」でも「プロトタイプドム」のデザインが似合うのではないか。紫成分が無いが、胸に赤が散ってるのは「ギャン・クリーガー」も同じなので、投影しやすそうだ。
MSV箱絵。キットの色指定や完成写真ではライトグレー部がもっと暗く、ロービジな感じ。
カラーレシピは以下の通り、ワンデイモデリングとして始めたので基本ビン生。
部位 | メーカー・シリーズ名 色番 | 色名 近似修正マンセル値 |
---|---|---|
本体 | GSIクレオス Mr. カラー C40 | ジャーマングレー N 2.5 |
上腕・太腿等 | GSIクレオス Mr. カラー C325 | グレー FS26440 10Y 7.2/1 |
顔面・盾縁等 | GSIクレオス Mr. カラー C114 | RLM23レッド 6.25R 4/11 |
ランス柄 | GSIクレオス Mr. カラー C19 | サンディブラウン 10YR 6/5 |
キットの色指定だともっとライトグレー部は暗く、ジャーマングレー+黒なのだが、箱絵の印象やロボ魂、リファイン版とも云えるMSDの「ドム試作実験機」などは軒並み白っぽく、この方が高コントラストで力強い印象になるのでそちらに寄せた。
得物のビームランスが黄土色なのはゲルググからの引用。特にそう書かれた文書は無かった筈だが、個人的に「ジオンにおけるビーム格闘兵器の標準塗装色」、と云う設定。
こう云う決まりが無いと、戦場で咄嗟に他機種の残骸から装備を回収して戦う時とか不便だと思うのだよね。
マーキングはジオノグラフィに隠し味を少々
マーキングはGFFジオノグラフィ風で、書体は既存フォントからの改造だが、完全に同デザインにはしていない。ジオノ書体は軍用書体として見たとき、視認性や識別性の部分でちょっとどうかな、と思う部分があったので、それを自分なりに整理してアレンジした。あと、MSVのボックスアートに使われていたフォントの雰囲気も少し意識している。
ジオノグラフィ「ガルバルディα」のマーキング。流石に20年近く前のアクションフィギュアなので、メーカー見本写真でもまともな解像度のものが無い。
上記書体をアレンジ。元書体だと「5」が「S」に見えたり、設定サイズでは現実的ではないステンシル体だったり、と云うのが気になるので、その辺を調整し、今回はつけてないが階級マークと文字の描線の太さを揃えている。
サイズ感や貼り付け位置は同シリーズの「ドム」「ゲルググ」「ガルバルディα」の良いとこ取りで、デカールそのものは以前紹介したチキン・ユウ氏考案の「テプラデカール」による製作である。
画像クリックで拡大。完成状態背面、基本ジオノを踏襲したマーキングだが、前後左右4方向で必ず機番と国籍がどこかしらに見える、と云うのは意識している。
「ガンプラ凄技テクニック」を実践してみる
折角の限定キットなので、今回はいつもよりウェザリングにも力を入れる。
以前書評で触れた林君の「ガンプラ凄技テクニック HG編」にほぼ同カラーリングの「ドム試作実験機」の作例があるので、それを参考に濃淡2色のウォッシングとスポンジチッピングを行い、最後にタミヤウェザリングマスターのマッドで粉っぽい泥汚れを乗せる。
マルチホワイトだけ掛けた左の状態では白すぎて不安になるが、上からグランドブラウンを乗せるとほぼ下地色の明度に戻る。
ウォッシングは林君に倣い、ウェザリングカラーのマルチホワイトとグランドブラウン。明色と暗色を重ねることで下地色の明度を大きくずらすことなく面に表情が付けられる、と云う技法だが、これの重ねる順番で仕上がりの表情が変わるのが面白い。マルチホワイトが上だと下地よりやや明るめ、グランドブラウンが上だとやや暗めになる。
今回は一年戦争末の機体なので全体の汚しは林君の作例よりも抑え気味にし、爆風による煤やオイル汚れを返り血的に受けるであろう鉾の鍔と盾はピンポイントでグランドブラウンを強めに入れている。逆に、ビーム刃の熱で劣化しそうな鉾の柄の先端はマルチホワイトを強めに入れて、塗膜が傷んで白化した感じに。
武器類の汚しは本体より強めに。更にここからチッピングが入る。
スポンジチッピングは、林君は焼鉄色を使っているが、私はタミヤのハルレッドを使ってみた。現実世界で金属の塗装剥がれを観察してみると、金属地肌まで露出しているものもあるが、プライマーや下塗り塗料が露出しているケースも結構あり、プライマー色が露出している表現も面白いかな、と思ったのだ。
均一に剥げさせるとウソ臭くなる。例えば、太腿はスカートに接触するエッジ部分へ控えめに、盾は爆発を受け止める為に全面に大き目の傷を、といった具合に、実戦での動きや状況を想像しながら粗密を考える。楽しい。
スカートや膝アーマーに護られる太腿と、撃破した敵機から爆風や弾片などを浴びる前腕や武器では塗膜の傷み方も違う筈。
塗装による発光表現を考える
電飾に頼らない発光感の表現と云えば、手っ取り早いのは蛍光色だが、今回はそこにもうひと味加えてみる。
モノアイとランドセルのセンサーは下地に蛍光レッドを塗った上からエナメル系のクリアレッドを乗せ、中心部分をぼかしながら拭取って発光している風に。イメージはLED化される前の車のテールランプ的な光り方だが、宇宙世紀のハイテク兵器がこんな古めかしい光り方をするだろうか、と云う部分にツッコミの余地がある(笑)
背面センサーは元設定だと青緑だが、なんか連邦っぽいのでモノアイと揃えて赤に。
鉾のビーム刃部分はアニメ作画に見られる、先端と付け根が白っぽく光るような表現をウェザリングカラーのマルチホワイトのウォッシングで再現。前篇で表面を荒らした部分にマルチホワイトが染み込み、良い感じの粒子流れっぽい表現になる。
なんか人参ぽい?。
本来なら、去年の「ギャンの日」あたりに公開できる筈だったのだが、結局1年越しの後篇となってしまった。
当時のツイート何かを見返すと「折角のプレバン商品だから」と云う感じでワンデイモデリングからなし崩しにそこそこ作り込みになっているのだが、今や定番商品ですら当時のプレバン以上の入手難の時代となってしまった。製作当時の昨年初頭は、まだ定番品なら雑に作り散らせた時代だったのだ。
来年の「ギャンの日」には、定価以下で手軽に「ギャン」のキットが買える時代になっているだろうか……。