以前、エアフィックスのハリケーンやハセガワの強風を作った際、パイロットを載せたら中々良い感じだったので、今回も搭乗員を乗せてみようと思う。
近年は、パイロットフィギュア冬の時代らしく、72大戦機で標準附属させているのはエアフィックスくらい。
別売フィギュアもラインナップに乏しいうえ、決め手に欠ける。
さて、どうしたものか……。
まず基本知識から。概ね、ウィキペディアと画像検索の適当まとめなので、あまり確度は高くない。完成すると7割方見えないので、これで良いのだ。
まず、ウィキペディアであらましを掴んだら、個々の装備名をグーグル翻訳で英語や独語に変換して画像検索する。
説得力のある画がでてきたら、そこの解説をグーグル翻訳で斜め読みして、より正確な装備名が出てきたら再びそれで画像検索。
最終的に模型資料として欲しい画像が手に入ったらゴール。お手軽である。
本気で調べたい人は、「WWIIドイツ空軍パイロット装備 1939-45」と云う、ガチな資料集があるらしいので、そちらが良いのではないだろうか (なげやり)
大戦初期の爆撃機搭乗員の服装
二次大戦初期のドイツ空軍の飛行服は、Flieger-Schutzanzug (フリーガー・シュッツアンツーク、以下、「初期飛行服」) と呼ばれるツナギ型飛行服で、その上からカポック製の救命胴衣を身に着けていた。
初期飛行服は木綿の夏季用と、ウールや革製の冬期用があったが、フランス戦の5月頃であれば恐らく夏季服であろう。
初期飛行服姿の爆撃機搭乗員。[1] 救命胴衣は大戦中~後期に用いられた空気式のものを着用している。
カポック製の救命胴衣は、時期によって2種類あるようだ。
前期型の10-76Aは背面までカポックで覆われていたが、着水時に背中の浮力で顔が水に浸かってしまうため、後期型の10-76Bではカポックが前側面だけとなった。[2]
また、10-76Bの方がカポック1コマのサイズがやや太くなり、前襟は前身頃と同じ幅になった。
左が後期型、右が前期型。[3] 並べてみると差異が判りやすい。
10-76Bは1940年~41年にかけての採用の為、フランス戦当時であれば、前期型の10-76Aが妥当と思われる。だがそれも、大戦中期以降はコンパクトな空気式に置き換えられていったため、当時の写真はあまり多くない。
搭乗時にはその上からパラシュートを装備するため、救命胴衣は襟を残してほとんどパラシュート用ハーネスで隠れてしまう。
訓練学校のひことま。左の訓練生が身に着けているパラシュートとは別に、右の人物は翼上の教官用のパラシュートを持っている。[4] 背布左脇から幅広の帯が伸び、腹巻状に前へ回り込む構造。
上写真では救命胴衣を着けていないため判りづらいが、パラシュートハーネスは背中全体を覆う背布に各ベルトが固定されているので、背中側の救命胴衣が見えるのは両脇だけである。
飛行帽や手袋は写真で見たまま、と云うか、1/72ではそれ以上の情報を盛り込みづらいので、工作の項でまとめて触れたい。
1/72
「1/72 パイロット」で検索すると真っ先にヒットするハセガワのパイロットセットは何故か着座姿勢が無い。
また、エレールのドイツ軍搭乗員・地上作業員セットは造形も成形ももヌルいうえ、かなり小さい。そして、表面の離型剤のベトつきが酷い。ランナーの刻印を見ると、「AIRFIX 1976」とあり、エアの骨董モノの箱替えのようだ。
左がレッドボックスで、エレールのキット。エレールは軟質樹脂・アンダースケール・謎のベトつきと云う三重苦でお蔵入り。
よって、ハセ強風の際に使ったREDBOX (レッドボックス) の日本海軍用フィギュアを、ドイツ軍に転職させた。
これも軟質樹脂なのだが、元の彫刻が素晴らしく、着座姿勢のバリエーションにも富んでいるので、できるだけキットのモールドを活かしてドイツ化する。
まず頭、日本軍の飛行帽に比べると裾や庇がスッキリしているので、ここはひたすら不要部分をカット。
両耳部分に無線機のレシーバーがつくので、ポンチで1.5mm径に抜いたプラペーパーを貼りつけて整形した。
ドイツ軍の夏季飛行帽。[5] 両耳の大型レシーバーが特徴。
初期飛行服は日本軍のそれに比べると、太腿の外付ポケットが無いのがシルエット上の目立つ相違なので、ここを削るだけでそれらしく見える。
また、手袋は日本軍よりショート丈なので、これも手首の位置辺りまで削り込む。
シートベルトのモールドは立体的で良い感じなのだが、これを残したままだとカポックの救命胴衣が再現しづらいので、勿体ないけど削り取る。
カポックの救命胴衣は、プラストラクトの0.3mmプラ棒で再現。
軟質ボディにそのまま貼っても固着しないので、一旦、胴衣の形に切り出したプラペーパー上にプラ棒を貼り、生乾きのタイミングでPP用硬化促進剤つきの瞬着で貼りつける。
胴体に固定したら、全体に流し込み接着剤を浸透させ、柔らかくなったところで体のラインに馴染ませる。
足したのは胸周りと耳のレシーバーの2点だけ、あとは削り込みだけでなんちゃってドイツ人になる。
その上から更に、パラシュート用ハーネスを取付る。
まず背面の下地部分をプラペーパーで胴体に再現、その上から、0.75mm幅に切ったラベルシールを重ね貼りしてベルト部分を作っていく。
背面ベルトの重なり順は、まず背面の「×の字」が一番下に来て、その上から腰用の水平部分、一番上に両肩から下がる垂直部分が来る。
背面から見える追加要素は、ほぼパラシュートハーネスのみ。
前面は両肩、両脇、両脚 (両肩ベルトとセットでパラシュートを保持) の6方向のベルトを円形バックルで留めており、バックル径は1/72で約1mm径くらい。
ベルトの位置関係が決まったら、ベルト部分に瞬着を染み込ませて固定して完成。
色調と塗装
塗料と違い、正確な文献資料は望むべくもないし、褪色・変色やロットによるばらつきも塗料以上と思われるので、ここは海外サイトに掲載されている現存品の写真から考えてみる。
木綿の夏季飛行服と飛行帽は、中明度・中彩度の茶色で、当時の写真ではRLM 02よりは暗く、RLM 71よりは明るく見える。現存品の色相はいずれもRLM 02より赤みを帯びており彩度は高め。
RLM 02が修正マンセル5Y 5/1付近なので、中央値は5YR 4/2~3あたりか。
今回は、5YR 4/2近似のMr. カラーのダークアースを使用。
先の飛行帽と同じサイトから。[6] 飛行帽と同じ色の筈なのだが、撮影環境のせいかカットごとに発色が全く異なり色が判然としない。
救命胴衣はMr. カラーのRLM 04そのままの10YR 7/12近似。
現存品ではもう少しくすんでいるようだが、用途からすれれば元はもっと鮮やかだったように考えられるし、アクセント色としてバランスがとれていると思う。
パラシュート用ハーネスは現存品の印象だと、ほぼRLM 02。
当時の写真でも先の飛行学校の写真の通り、明らかに飛行服より明るい。クレオス瓶生のRLM 02はRAL見本色からの近似値より鮮やかめの5Y 5/2で、機内色のRLM 02と適度に差別化できるのでそのまま使用。
フリーガー・シュッツアンツーク 夏季飛行服 | 5YR 4/2 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C22 ダークアース |
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救命胴衣 | 10YR 7/12 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C113 RLM04 イエロー |
ハーネス | 10Y 5/2 | GSIクレオス Mr. カラー 旧蓋/新ラベル C60 RLM 02 グレー |
手袋と長靴は普通の黒革っぽいので、身近な革製品を参考に適当な黒系でそれらしく。
さて、装備品の色も良く判らないが、ドイツ人の肌の色もまたしかり。
黄色人種より白人の方が黄色っぽいという説もあるが、これはどうもCIEの演色評価用見本に存在する2色の肌色からの推定らしく、それ以上の根拠は見つけられなかった。
ただ、マンセル社の研究[7] で、白人 (白系コーカソイド、この場合は多分アメリカ人) の肌の色は概ねマンセル値明度6付近、色相は2.5YR~7.5YRと云うのが判ったので、あとはフィーリングでMr. カラーのサンディブラウンを使用。
あまり鮮やかすぎず、気に入っている。
日焼けしてない黄色人種の手にサンディブラウンを塗ってみる。焼けた肌はやや黄色味を帯びるので、こんな感じではと。
肌色 (白系コーカソイド) | 7.5YR 6.5/4 | GSIクレオス Mr. カラー 新蓋 C19 サンディブラウン |
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手間が掛かっただけあって、カポックのパターンはそれらしくできたと思う。
上記現存品に比べると全体に鮮やか目だが、褪色を鑑みるとこれ位なのでは?
軟質フィギュアの本格的な改造は初めてだったのだが、やはり素材の特性上、細かな彫刻が施しづらいのと、接着難度の高さが気になった。
そのあたりの加工性を考えると、ハセガワの搭乗員セットやミニスケールAFVのスチロール樹脂製フィギュアをポーズ変えして盛り削りする方が楽だったかもしれない。
今は72大戦機自体が国内は低調なので、エアフィックスやズベズダあたりでこう云ったキットが出てくれると有難いのだが……。
参考ウェブサイト
- 「軍服 (ドイツ国防軍空軍) – Wikipedia」『ウィキペディア』、2016年3月閲覧 ^1
- 「Redningsvest 10-76 B-1 Historie」『Flyve- og nødudstyr anvendt i Flyvevåbnet – Fysiolog』、2016年3月閲覧 (デンマーク語?) ^2
- 「Luftwaffe 1940 Flight Suit Uniform to a Feldwebel」『Rathbone Museum of WWII Air Force Uniforms and Insignia』、2016年3月閲覧 (英語) ^5 ^6
- 「Munsell and the Color of Flesh Part 2」『Munsell Color System; Color Matching from Munsell Color Company』、2016年3月閲覧 (英語) ^7
参考書籍
- 『世界の傑作機 No. 152 ユンカース Ju 87 スツーカ』文林堂、2013年、81頁 ^3
- 『世界の傑作機 No. 105 メッサーシュミット Bf 109 (パート1)』文林堂、2004年、58頁 ^4
すべて敬称略。
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Mimizukuさま
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